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「光応答材料研究ネットワーク」設立の趣旨

2010年度、2011年度代表
横浜国立大学大学院工学研究院
横山 泰

  フォトクロミズムをその典型とする、光に対して応答し、物性や機能のスイッチをす るような材料の研究は世界的に盛んになっている。 特に日本においては、「有機フォトクロミズム材料及びその光応答機能利用」分野は「急速に発展しつつある 分野」として文部科学省科学技術 政策研究所から報告されている。一方、フランスにおいては、フォトクロミズムに関する国際シンポジウムを第1回、 第4回を開催するなど研究が盛 んであり、研究者人口も日本と並んで多い。
  フランス国立科学研究センター(CNRS)は光応答物質の 研究に対して熱心であり、2008年より4年間、多国間共同研究グループ (IRG: International Research Group)を構築し、研究交流を支 援している。その略称はPHENICS (Photo-switchablE orgaNIC molecular systems and deviceS)である。参加国はフランス(国内10大学)、日本(科研費 特定領域研究計画班員所属の12大学)、ロシア(Russian Academy of Sciences所属の5研究所と国内5大学)、中国(Chinese Academy of Sciences所属の2研究 所と国内3大学)であり、大学は それぞれ学長が代表となって調印して参加している。
  日本においては、科研費特定領域研究が研究組織として参加してきたが、これは恒常 的なものではないので、これに代わる恒常的な国 内研究組織が必要とされた。そのような背景の中、日本国内において、本分野の研究を盛り立てようという大学 が現れてきた。
  奈良先端科学技術大学院大学では、河合壯教授を研究代表者として、奈良県が主導す る研究プロジェクト「ライフサイエンスへの 展開を目指した光応答分子材料の開発」が2010年に開始された。 青山学院大学では、同じく2010年に阿部二朗教授を中心として 「青山学院フォトクロミズム研究コンソーシアム」を 設立し、産学連携を視野に入れた開発研究を開始した。横浜国立大学では、これも2010年に横山泰教授を代表として、 学長主導のプロジェクト「新機能を指向する光応答材 料の創製と機能解析」がスタートし、2011年度からは工学研究院グループ研究としても活動を開始した。 これら三つのプロジェ クトは個々の大学の考えによるものであるが、奇しくも2010年に誕生したものである。これらの情報はすぐにそれぞれの代表者が共有し、 それで は、これらのプロジェクトがそれぞれ協調すれば、日本国内におけるこの分野の教育研究を進展させることができないか、という構想の下、 それぞれの代表者が 各大学の学長に相談したところ、いずれも快諾していただくことができた。事務的な作業の後、2011年3月1日に この3大学の 学長の調印が行われ、日本国内に例を見ない3大学 の包括連携協定が締結された。そして、その組織名は「光応答材料研究ネットワーク」と決定し、 2010年度、2011年 度は横山教授が代表を務めることとなった。
  この協定は、いずれかの大学からの活動停止の申し出がない限り継続するという永続 性のあるものであり、内容は、本分野における教育・ 研究・産学連携など多方面にわたる連携関係を構築して行くものである。また、連携は3大学 がコアとなって運営されるが、国内他大学において 本分野の教育研究を行う教員も参画することができる。さらに、このネットワークは国内連携だけでなく、上 記CNRS主導の国際共同研究IRGに参加する 日本の組 織として活動して行くことを確認した。
  このようなネットワークの構築を記念して、3月25日 に協定締結記念セミナーを開催するはずであったが、東日本大震災によって延期せざるを得ず、 年度が替わって情勢が一段落した2011年7月28日 に3大学共同セミナーを開催し、それぞれの大学で進行中の研究について理解を深めた。 今後は 共同研究や学生交流を通し、連携の実を挙げながらこの分野における解決すべき課題を明らかにし、そのためのプロジェクト提案などまで高めて行くこと を考えている。