私たちのグループは、「有機フォトクロミズム」の研究を行っています。
扱っている化合物は、熱不可逆なフォトクロミズムを示すフルギド類・ジアリールエテン類、
熱可逆なフォトクロミズムを示すスピロピラン類・スピロオキサジン類などが主ですが、
これらの範疇に入らない、新規フォトクロミック化合物の開発も行っています。




フォトクロミズムを何に使うか

(1) フォトンモードの書き換え型高密度光記録材料

 熱不可逆なフォトクロミック化合物の用途として,光記録材料がまず考えられます。このために要求される条件として、以下のものが挙げられます。

   1 記録の熱安定性(長期保存が可能)
   2 繰り返し記録・消去に対する耐久性(繰り返し使用が可能)
   3 記録・消去が高速であること
   4 記録・消去が高感度で行えること
   5 半導体レーザーが使用可能であること
   6 ポリマー媒体中で使用可能であること
   7 記録を非破壊で読み出せること

 これらの内、私たちがもっとも興味を持っているのが7の「記録の非破壊読み出し」です。これまでに3通りの方法を提案してきましたが、その内の一つ、 「記録の読み出しを旋光度変化によって行う」という方法が最も可能性が高いと信じ、いろいろなアプローチを試みています。

 記録の読み出しは、書き込み・消去と同様光で行わなければ高速性が保てません。もっとも容易な方法は、吸収の有無で記録を読み出す方法ですが、これは必 ず光反応を誘起し、その結果記録が徐々に失われてしまいます。したがって、読み出しは吸収のない波長で行わなければなりません。旋光度は、吸収がない波長 でも値があるので、光照射によって非常に大きな旋光度の変化が起きれば、これを用いて記録の読み出しが可能です。

 この場合、書き込み・消去・読み出しに別々の光を用いるので、3ヘッドの光学系が必要となります。あるいは、SHG素子を用いて光源の数を減らせるかも しれません。しかし、私たちの研究室ではデバイスまで開発するつもりはありません。アイデアの提示とプロトタイプの実証までが守備範囲です。


(2) 光をスイッチとする機能性材料

 熱不可逆なフォトクロミック化合物は、光の一過性の照射で構造・物性のスイッチができます。従って、ある機能をフォトクロミック化合物に持たせたとき、 光照射によって機能を発現させ、機能を止めようと思ったら別の光を照射すればよいということになります。このような観点から、以下に示すような第二の化学 物質との相互作用を光によって制御する研究を行っています。

   1 クラウンエーテル部を持つフォトクロミック化合物の相互作用の光による制御
   2 多重の水素結合を形成できるフォトクロミック化合物の,水素結合形成能の光による制御
   3 液晶の中にドープしたフォトクロミック化合物の光構造変化による,液晶の物性の可逆的光制御
   4 不斉有機フォトクロミズム系の開発
   5 光による屈折率・旋光度等の光学的/不斉光学的性質の制御